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インプラント周囲炎

インプラント治療を受ける際には、治療後にかかる病気も知っておくべきでしょう。その一つである「インプラント周囲炎」は自覚が難しい上に進行が早いのが特徴です。一旦インプラント周囲炎を発症するとインプラントが骨から抜け落ちたり、インプラント本体が歯茎から露出したりします。ここではインプラント周囲炎の特徴や発生の原因、予防方法についてまとめているので、治療前の参考にご一読ください。

インプラント周囲炎とは?

インプラント周囲炎とは、インプラント周囲の組織に炎症が起こっている状態です。

インプラント周囲炎は炎症の波及範囲によって「インプラント周囲粘膜炎」と「インプラント周囲炎」の2段階に分けられます。インプラント周囲炎の初期段階であるインプラント周囲粘膜炎では、炎症の範囲が歯肉の範囲内で、インプラントを支えている骨までは及んでいない状態です。自覚症状はほとんど無く、インプラント周囲をブラッシングした時に歯茎からわずかに出血する程度の症状しかありません。そこでインプラント周囲粘膜炎にかかっているのが本人は分からないのが実情です。

「インプラント周囲粘膜炎」が進行すると「インプラント周囲炎」になります。「インプラント周囲粘膜炎」の内はブラッシングを強化することで元の健康な状態に戻ることが期待できますが、「インプラント周囲炎」になってインプラント周囲の骨が溶け出すと、ブラッシングを強化しても元の状態に戻ることは非常に難しくなります。「インプラント周囲炎」が進行するとインプラント周囲の骨が無くなり、歯茎が下がり、歯茎からインプラントが露出してしまいます。そのような状態でも痛みがなく、歯茎の腫れもほとんど無い為、患者さん自身が気づきにくい病気です。

インプラント周囲炎を早期発見・予防する為には御本人の努力だけでは出来ません。日頃から歯科医院で定期健診を受診することが重要です。

http://www.shika-implant.org/publication/dl/2016_guide.pdf

参考書籍

「専門家が教える歯科インプラントのすべて」P96、97

歯周病とインプラント周囲炎の症状比較

インプラント周囲炎と歯周病は、どちらも細菌と力の問題が原因で発症する病気です。発症のメカニズムは基本的に同じですが、インプラント周囲炎は進行が非常に早く、歯周病と比べて10~20倍の早さで悪化します。

さらに、インプラント周囲炎には

などといった特徴があります。そのため、歯周病よりも自覚症状がなく、発見が遅くなりやすい厄介な病気です。

歯周病とインプラント周囲炎の順に説明していきます。

症状 歯周病 インプラント周囲炎
炎症 発症した初期から腫れ、ムズムズする 炎症は弱いが、進行すると歯周病より強くなる
出血 歯茎から出血しやすい 深刻な状態になるまで出血しにくい
骨への影響を考えて行う処置 初期から中等度までは歯根表面の細菌除去で対処するが根分岐部病変の骨吸収が進行している場合は抜歯を選択することにより骨の温存を図る。 一旦発症すると疾患の進行は早いが、周囲組織を剥離しインプラント表面を物理的に清掃することにより骨の温存を図る。
歯のぐらつき 病気の進行に沿って歯がぐらつく ぐらつきはなく、突然抜け落ちる
痛み 骨吸収が進行して歯に動揺を認めるようになると、硬いものを噛むと痛くて噛めないようになる。 骨吸収が進行しても痛みがなく機能する。インプラントの先端部まで骨が吸収するといきなりグラグラになり噛めなくなる。

参考書籍

「専門家が教える歯科インプラントのすべて」P96

インプラント周囲炎が起こるメカニズム

インプラント治療は取り外し式の入れ歯のような違和感はほとんどなく、ブリッジのように隣在歯や他の健全歯の切削の必要性がないなどの多くの利点により一般的になってきました。しかし、インプラントも天然歯における歯周炎と同様に歯垢(プラーク)による炎症で発現するインプラント周囲炎が問題となってきています。そこで、インプラント周囲炎の発症のメカニズムについてお話し、インプラント周囲炎の予防を理解していただきたいと思います。

 歯垢(プラーク)がインプラント周囲組織に及ぼす影響

1,インプラントと天然歯における維持機構の違い

 現在、インプラントは、一口腔内において天然歯と混在した環境で応用されています。しかし、天然歯は、歯肉、セメント質、歯根膜と歯槽骨で維持されていますが、インプラントでは、歯肉と歯槽骨とくに歯槽骨とインプラントとの結合(オッセオインテグレーション)で維持されています。したがって、天然歯とインプラントでは、それぞれを維持している組織の構造のうえで大きな違いがあります。そこで、インプラント周囲炎を考える場合に天然歯と対比して考える必要があります。

2,臨床所見

 インプラント周囲炎における臨床所見での「プロービングの深さ」と「出血」の変化を直後、3カ月、6カ月でみました。「プロービングの深さ」は、術後6カ月でインプラント群が、天然歯に比較しポケットの深さを増加させ、「出血」も3カ月および6カ月共にインプラント群が出血傾向が大です。したがって、「プロービングの深さ」および「出血」ともインプラント群で大であり天然歯に比較しインプラント周囲組織には、強度の炎症の発現を生じていると考えられます。

3,細菌学的検査

 インプラント群と天然歯群におけるプラーク細菌叢の細菌学的検索では、両群間で大きな違いはなく、形態学的には、球菌の割合は日時の経過とともに減少し、変わって、運動性桿菌の割合が増加しています。したがって、インプラント周囲炎におけるポケット内細菌叢は天然歯と類似していることより、天然歯のプターク細菌叢が隣接するインプラントのポケット内に影響を及ぼすことは十分に考えられます。

(2)プラーク細菌によるインプラント周囲組織破壊(組織学的検索)

プラーク細菌に対する天然歯とインプラントの周囲組織に対する影響は、著しく異なっていました。同じ期間プラーク細菌を関与させましたが、天然歯では、歯肉組織に炎症は認められていません。一方、インプラントの周囲組織には著しい炎症性細胞浸潤を発現していました。

術後6ヵ月で天然歯群においては歯周組織に炎症は認められませんでしたが、インプラント群においてはインプラント歯周炎を生じていることが観察されました。

また、プラーク細菌が関与したインプラント周囲炎では、天然歯に認められる歯周炎とは異なった組織破壊像を呈していました。天然歯の歯周炎で認められる歯周ポケットの形成はインプラント周囲炎ではあまり認められません。一方、インプラント周囲組織における炎症性細胞浸潤の著しい部位は、フィックスチャーとアバットメントの接合部を中心として認められました。これら著しい炎症性細胞浸潤は、歯槽骨頂部に達し、カップ状の骨吸収を発現し、天然歯で認められる垂直性骨吸収の形成は認められませんでした。

以上プラーク細菌がインプラント周囲組織に及ぼす影響について見てきましたが

  1. 天然歯の歯周ポケット内細菌叢がインプラントサルカス内の細菌叢に影響を及ぼすこと
  2. プラーク細菌に対し天然歯に比較して、インプラントの周囲組織は炎症による破壊が著しいこと
  3. インプラント周囲炎では、フィックスチャーとアバットメントの接合部に著しい炎症の発現がみられたこと

などのインプラント周囲炎の特徴があげられますので、インプラントの臨床応用に際してはこれらの特徴を理解されて応用してください。

参考文献

  1. 穂坂康朗、関口一実、斉藤 淳、木暮隆司、中川種昭、山田 了:プラークのイヌインプラント周囲組織に及ぼう影響についてー臨床・細菌学的検索-、日歯周誌、38:339~345,1996.
  2. 山之内一也、太田幹夫、大島みどり、日高庸行、山田 了:プラークのイヌインプラント周囲組織に及ぼう影響に関する組織学的研究、日歯周誌、38:457~464,1996.
  3. Marinello,C.P, Berglundh, T., Ericsson, I., Klinge, Glantz, P.O.and Lindhe, J. : Resolution of ligature-induced peri-implantitis lesions in the dong. J. Clin. Periodontol., 22: 475~479,1995.

細菌以外が原因でインプラント周囲炎になる原因

インプラント周囲炎の主な原因は歯周病原菌だと言われていますが、歯ぎしりや食いしばりなどインプラントに対して過度な力がかかった場合にもインプラント周囲の骨が破壊されオッセオインテグレーションが失われることがあります。 

人が食事をする時に歯やインプラントにかかる荷重は体重程度と言われています。一方、夜間に無意識で行う歯ぎしりや食いしばりは100kg以上の荷重が長時間かかることが分かっています。この過大な荷重が歯牙や補綴物を破折させたり、歯周病の進行を助長したり、インプラントのオッセオインテグレーションを破壊させるのです。

歯ぎしりや食いしばりなどの原因

昔は、噛み合わせの不調和や顎の位置のズレなどが歯ぎしりや食いしばりなどの原因と考えられていましたが、現在は人や動物は食いしばることによってストレスを解放するホルモンが出て、心の安定という目的の為に行う、必然性のある行為なので、歯ぎしりや食いしばりを無くすことは出来ないと分かってきました。

歯ぎしりや食いしばりなどに対する対処法

昼間に歯ぎしりや食いしばりなどをする癖のある方は意識して、歯ぎしりや食いしばりなどを行わないようにしてもらいます。夜間の意識がない時間の歯ぎしりや食いしばりなどに対する対処法はナイトガードという歯やインプラントを保護するマウスピースを毎晩装着した状態で就寝していただきます。

インプラント周囲炎の治療

インプラント周囲炎の治療法ですが、一度吸収してしまった骨を元の状態に回復することは非常に難しく、インプラント周囲炎の進行を食い止めることを主目標にして行います。しかしながら、インプラント周囲炎の進行を食い止めることにおいても、確実な結果を得ることは非常に難しいというのが現実です。

の2種類があります。

非外科的療法

インプラント周囲炎の原因は歯周病菌による細菌感染なので、細菌の除去で症状緩和を図ります。

まずプラークコントロールを徹底した後、超音波スケーラー、プロフィー、ラバーカップ、チタン性スケーラー、プラスチックスケーラーなどの機器・器具を用いてインプラント表面の歯垢・歯石を除去。

場合により薬剤によって含嗽を行います。急性の炎症には、抗生物質の服用をします。

外科的療法

非外科的療法で症状の改善がなかった場合、外科的療法がとられます。

通常は歯肉を切開剥離した後、肉芽組織を除去し、インプラント表面に付着した汚れをチタンブラシややβ-TCPのパウダーを吹き付けることによって綺麗にします。それでも炎症が治まらない場合には細菌が入り込んだインプラント表面をバーやレーザーで削ってインプラント表面をきれいにします。その後には場合によって吸収してしまった骨の部分に人工骨をおいて骨の再生を試みる場合もあります。

インプラント周囲炎の予防

歯磨きの習慣と歯磨きの技術を徹底させる。

インプラント周囲炎を防ぐには日々の歯磨きで口腔内の歯垢(プラーク)を毎日取り除くことが大切です。歯垢は炎症を起こす原因となる歯周病原菌の塊です。歯垢をしっかり落とすため、口の状態に合った磨き方を歯科医院で教えてもらい、その方法を徹底させましょう。

またインプラント治療では通常の歯の磨き方だけでは無く、歯間ブラシやエンドタフトブラシ、スーパーフロスなど、磨く道具が追加される場合があります。歯科医師・衛生士からの適切な指導を受けてインプラントに適した正しい歯磨きを習慣づけましょう。

定期健診を受ける

歯科医院で受けられる定期健診では、歯垢・歯石の残存、清掃状態の確認をはじめインプラント周囲の歯茎・骨の状態・噛み合わせなどの状態を診ます。健診結果に応じて、インプラントの調整や日々の手入れに関する指導を受けられるので、インプラント周囲炎を未然に防ぐ効果を期待できます。

また、自分では丁寧に磨いているつもりでも、目に見えないところで汚れが溜まっていることが多いです。インプラントや歯に歯垢が溜まると、歯石が形成され、細菌の繁殖を促進させる原因になります。歯石は自分で落とすことが難しいので、歯科医院の医療機器で落とすことが必要です。歯石を除去することで歯垢や汚れが付着しにくくなるというメリットがあるので、定期的にプロによる口腔内清掃とチェックが重要です。

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