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知覚異常や麻痺について

インプラント治療は外科侵襲を伴う治療です。治療に伴い術後の「知覚麻痺」「しびれ感」「感覚異常」が残ることがあるので、この項ではそれらについて解説します。

インプラント治療によっておこる知覚異常・麻痺について

インプラント治療において通常は歯肉を切開、剥離し、骨を露出した状態で骨面を確認しながらインプラントを埋入します。

しかし歯肉や骨の中には血管や神経線維などの組織が走行しています。この歯肉の切開、剥離を行うことにより70%の症例において、手術後に以前とは違う皮膚感覚を感じるという報告があります。

しかし、多くの場合、これらの違和感は1年程度で消失すると言われています。

下口唇周囲の知覚麻痺

一方、インプラントトラブルの中で「ソケットリフトに伴う上顎洞炎」の次に頻度が高いトラブルが「下歯槽神経が損傷したことによる、下口唇周囲の知覚麻痺」です。

下顎の骨の中には下顎管という下歯槽神経管が内部を走行している管があります。

インプラント手術に伴いドリルなどで下顎管を損傷すると、下顎管の内部にある下歯槽神経を損傷し、口角から唇下の親指大の面積の皮膚知覚が無くなります。

その部分を指で触っても感覚がありません。この状態を知覚麻痺と呼びます。

下歯槽神経を切断しなければ数ヶ月でなくなる可能性が高い

下歯槽神経を完全に切断した場合、知覚麻痺は治らないことが分かってします。一方、インプラント手術に伴い一時的に神経周囲の組織が神経を圧迫し、知覚麻痺の症状が出ることがありますが、これは誰にでもおこる一過性の麻痺で、数ヶ月後に麻痺は無くなりますので心配することはありません。

下歯槽神経を切断した場合と神経圧迫による麻痺の見分け方

では、下歯槽神経を完全に切断した場合に起こる知覚麻痺と、神経を圧迫したことによって起こる一過性の麻痺とをどの様に鑑別したら良いのでしょうか?

一般的には手術直後に撮影された術後CTによって、ドリルやインプラント体によって下歯槽神経が傷つけられたと判断します。

CT画像によって神経に到るまで骨内の骨梁がドリルによって欠き取られたCT画像やインプラント体が下顎管を貫いているようなCT画像を確認した場合、下歯槽神経が損傷したと判断します。

術後麻痺症状の治療

術後麻痺症状がある場合や、上記のCT画像が確認された場合には麻痺の範囲を確定し、写真で記録した上で神経周囲の圧力を取り除き血行改善を行う目的でインプラント体の除去とステロイド剤、ATP製剤、複合ビタミン剤の投与を行います。

その後、大学病院や総合病院の口腔外科などの第二次医療機関に対診を求めます。

神経麻痺を起こさない為に

下顎のインプラント手術においては下顎管(下歯槽神経)が下顎の中のどこを走行しているかを正確に把握する必要があります。

その為には術前にCT撮影を行い正確な下顎管(下歯槽神経)の走行位置を抽出します。

そして下顎管(下歯槽神経)に対して通常は3mm以上距離を離してインプラント埋入位置を設定して手術ブランの立案を行います。

下顎管(下歯槽神経)は骨内に埋まっているので、下歯槽神経を直接、見ながら手術することは不可能です。

インプラントシミュレーションを用いての手術

この手術を正確に行う為にはインプラントシミュレーションソフトを用い手術プランを作成した上で、その手術プランを正確に実際の手術に反映させる為にはコンピュータシミュレーションソフトによって製作したコンピュータサージカルガイドを用いて手術を行う必要があります。

インプラントシミュレーションに対する問題点

これらの作業はインプラント手術前に行うことが必要ですが、非常に多くの時間がかかりますし、コンピュータサージカルガイドの製作には高額のコストがかかります。

また、ソフトウエアの使用料にも膨大な費用がかかります。また、手術直後の状態をリアルタイムに把握する為には医院がCTを保有している必要もあります。

トラブルが起きる原因の一つが準備の不十分によるもの

国民生活センターのデータによると、全国の歯科医院の約2割でインプラント治療が行われています。インプラント治療には、治療水準に大きな差があるとされています。インプラント手術前の準備が不十分なこともトラブルが起きる要因のひとつです。

国民生活センターのデータではインプラント治療を行なったあとにおこったトラブルのうち、1ヶ月を超えて痛みや腫れのトラブルが継続しているケースは154件ありました。そのうち、64件は1年を超えてトラブルが継続しており、日常生活に多大な影響が出ているといわれています。

トラブルの事例

神奈川に住む70代の女性は、自宅近くの歯科医院でインプラント治療を受けました。結果、治療直後から右側の唇からあごに欠けてしびれが生じ、感覚がなくなってしまったトラブルが発生しています。発生から3年経ち、症状は改善していません。

参考URL:歯科インプラント治療に係る問題(国民生活センターP6)

下歯槽神経麻痺が起こる背景

CTについて

以前は個人の歯科医院にCTがあるということはありませんでした。

そもそもCTは軟組織を診査する為に開発され機器で放射線被曝量も多く画像も荒い歯科には適さない機材でした。

それが歯科で用いられるようになったのはコーンビームCTというインプラント治療など骨を診査することを目的としたCTが開発されたからです。

コーンビームCTは放射線被曝量が非常少なく歯や骨の状態を非常に細かく観察することが出来ます。

シミュレーションソフトやサージガルガイドについて

また、30年前はインプラントコンピュータシミュレーションソフトやコンピュータサージカルガイドというシステムも存在しませんでした。医療の世界は日進月歩で凄まじい進歩をし続けています。

しかし、これらの機材を購入し使いこなす為には膨大なコストと時間がかかります。これらのシステムを構築し運用する為には専門的にインプラント治療をおこなっている歯科医院でないと難しいという現実があります。

トラブルは「経営環境の悪化」と「歯科医師の技量不足」も原因の一つ

トラブルの背景には「経営環境の悪化」と「歯科医師の技量不足」があります。インプラント治療は自由診療なので、高額の治療費の設定が可能です。

しかし、きちんとした仕事をする為には膨大なコストと膨大な勉強と研修とトレーニングが必要です。

けっして誰でも短期間でマスターできる簡単な仕事ではありません。しかし、そのシビアさを理解していない歯科医師が自分の力量を超えた治療を行なった場合トラブルに繋がる場合があります。

厳密にいうと簡単な症例という症例は存在しません。手術中には予想外な事態が起こる可能性を否定することはできません。何がおこるかは分からないのです。

インプラント治療に失敗したある歯科医師はインプラント治療を学んだ経験がほとんどなく、インプラントメーカーが主催する講習4日間のみで治療を行なった結果トラブルが起きたという事例が報告されています。

力量に合わない治療を行なった結果、失敗につながったと語られています。

参考書籍:「専門家が教える歯科インプラントのすべて」82P

リスクを回避するために

インプラント治療は、高度な技術や入念な検査が必要となる治療法です。インプラント治療を受けるのであれば、リスクを回避するために「歯科医師の技術」「歯科医院の信頼性」「歯科医院の設備」を重視しましょう。

歯科医師の技術

歯科医師の治療実績や評判の確認は、リスクを避ける上で大事なことです。

インプラント治療を行なう歯科医師は、必ずしも十分な技術を持っているとは限りません。技術が未熟なまま、インプラントの導入を始めた歯科医師もいますので注意が必要です。

信頼できる歯科医院選び

丁寧に検査してくれる歯科医院を選びましょう。また、治療するかどうかの結論を急がせない歯科医院は信頼できます。

インプラント治療は命に関わる病気と違い、緊急性は低いのが一般的です。1ヶ月や2ヶ月遅れても問題は起きません。結論を急がせる歯科医院には、注意が必要です。

歯科医院の設備

CT撮影は安全で確実なインプラント治療に必要な設備です。CT撮影を行える環境が整っていない歯科医院でのインプラント治療は、リスクがあると覚えておきましょう。

どれかが欠けてしまえば、インプラント治療はトラブルを引き起こします。術者の技量が不十分なケースやインプラント治療の経験不足が原因で起きたトラブルは、これまでにも数多くありました。

CT検査を行なわなかったために、上顎のインプラントが上顎洞を突き抜けたり、下顎のインプラントが下歯槽神経に触って麻痺がおこってしまったりといった、いずれも大きなトラブルです。

コンピュータシミュレーションソフトによるコンピュータサージカルガイド手術

コンピューターシミュレーションソフト

安全なインプラント手術にCT撮影は欠かせません。顎骨の形状や神経の位置を把握できるので、治療をスムーズに行なえます。

近年はCTによる精密検査だけでなく、CT撮影データとコンピューターシミュレーションソフトを使い、詳細な治療計画を作れるようになりました。

手術時間が短縮でき、治療計画が定まった状態でインプラント治療を受けられるので、ミスの可能性やリスクが抑えられるのが特徴です。治療のシミュレーションには、「シムプラント」「ケアーズ」「ノーベルクリニシャン」などがグローバルに使用されているインプラントシミュレーションソフトです。

コンピュータサージカルガイド

上記のようなコンピュータシミュレーションソフトで設計した治療プランを、実際の手術で設計通りの位置に埋め込むシステムです。

コンピュータシュミレーションソフトを活用することで難易度の高いインプラント治療を、正確にかつ負担が少ない形で行なえます。

自分の歯の状態に近いオールオン4の症例は?