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インプラント治療に伴う問題と合併症

第2の永久歯と言われるインプラント。一度なくなってしまった歯をよみがえらせ、自分の歯と遜色なく食事を楽しめるだけでなく、若々しい笑顔を回復できる高度な治療法として注目されています。しかし、歯・歯茎・顎の骨に手術を行いますので、様々な問題が起きる可能性があります。ここではインプラント治療を受ける上で理解しておきたい問題と合併症について紹介しています。

インプラント治療に伴う問題と合併症とは

インプラント治療に伴う合併症とは、検査や手術を含めた医療行為により引き起こされた症状のことです。

手術中に合併症が起こる場合もありますし.治療中、また治療後、時間が経過してから問題が起きる可能性がありますので、治療が終了し快適に感じていても、状況を自己判断するのでは無く、歯科医院で定期健康診断を受け問題が起こっていないか定期的にチェックすることが重要です。

参考URL[※1]http://www.shika-implant.org/publication/dl/2016_guide.pdf

インプラント治療において、手術時および、手術に継続して起こる問題や合併症の代表例

1.感染

口腔内には常に細菌が存在します。その環境の中でインプラント手術が行われますので、術前の口腔内清掃が悪かったり、残っている歯が歯周病になっていたり、歯の根が割れていたり、根の先に膿の袋があるような状態ではインプラントや顎の骨や歯茎が感染するリスクが高くなります。

また、糖尿病を罹っている方や、喫煙者の場合は細菌に対する抵抗力が弱く、感染のリスクが高くなります。

2.下歯槽神経損傷

下顎臼歯部には下顎管という管があり、内部には下歯槽神経・下歯槽動静脈が走行しています。

手術時にドリルで下顎管を傷つけると内部の下歯槽神経を損傷し、下口唇部に知覚異常や知覚麻痺を起こすことがあります。下顎管を傷つけ無くても、手術に伴い一過性の麻痺が起こることがありますが、下歯槽神経を損傷していない場合は数ヶ月で知覚は回復します。

しかし、下歯槽神経を傷つけている場合は一旦麻痺が起こると知覚の回復は困難です。このようなトラブルを回避する為には術前に下歯槽神経損傷の走行位置を十分に把握して手術を行うことが重要です。

その為には術前にCT検査を行い、コンピュータシュミレーションソフトを用い、十分な安全域を確保した手術プランの設計を行い、コンピュータシュミレーションによって計画された手術プランを反映したコンピュータサージカルガイドを使用することによって下歯槽神経損傷のリスクを最低限に低減出来ると考えられています。

3.その他の神経損傷

下歯槽神経損傷以外に舌神経や眼窩下神経に麻痺が起こることがあります。

神経繊維自体を切断したり、神経周囲の組織を牽引する鉤などの器具が過度に神経を引っ張ったり接触することによって麻痺が起こります。

4.上顎洞炎(副鼻腔炎)

上顎臼歯が無くなった場合、残存する歯槽骨の厚みは5mm〜7mm程度と言われています。

ところが、口腔内で長期に安定するインプラントの長さは10mm程度は必要と言われています。

そこで上顎臼歯部にインプラントを埋入する場合、出来る限り長いインプラントを埋めた方が長期的に安定するのでインプラント体が上顎洞内に突き出さないように、インプラントの先端部が上顎洞底にギリギリ接するような位置に埋めます。

また、骨の量が10mmに満たないような場合は、サイナスリフトによって上顎洞底を挙上し上顎洞内部に骨補填材を充填し、十分な厚みの骨が出来た後にインプラントを埋めるという方法を用います。

これらの手術に伴い上顎洞に感染がおこり、上顎洞炎(副鼻腔炎)が起こることがあります。上顎洞は副鼻腔の一つですが、鼻中隔湾曲などで中鼻道自然孔排泄ルートが狭く、上顎洞粘液の排泄が悪い場合などには上顎洞炎が慢性化して、鼻づまりや膿が出ることが続く場合があります。

5.上顎洞へのインプラント迷入

上顎臼歯部へのインプラント埋入において骨量が十分に無い場合に骨造成を行わずにインプラント埋入を行なった場合や、ソケットリフトと同時のインプラント埋入を行った場合に上顎洞内にインプラントが入り込んでしまう場合があります。

6.異常出血

口腔内には多数の血管が走行しており、手術に伴い大きな血管を傷つけた場合に大量の出血を起こすことがあります。

また、肝機能が低下していて血液が固まり難い場合や、狭心症や心筋梗塞の予防のため血液が凝固し難い薬を服用している場合も出血が止まらない場合があります。

また、血圧が高い場合にも異常出血が起こる場合があります。口腔底部での異常出血は気道を圧迫し気道を閉塞する場合があり、窒息のリスクがあります。

7.異常疼痛

手術後に麻酔が切れた後、著しい痛みを訴える場合があります。

原因としてはインプラント埋入窩を形成する時に骨が加熱され火傷を起こした場合や、感染を起こした場合、また患者さんが痛みに対して極端にデリケートに感じる過敏症のような場合も異常疼痛を発言する場合があります。

8.機材やインプラントの誤飲、誤嚥

手術中に手術器具やインプラントを飲み込んでしまう場合があります。

胃の中に入った場合、通常は自然排泄されますが、気管に入った場合は自然排泄はありませんので内視鏡で取り出す必要があります。

9.機材の破損

骨を削るドリルやインプラント体などが骨内で折れて取り出せない場合があります。

10.インプラント体のスタックや破損

インプラントを骨に埋める過程で、骨内でインプラントが噛み込んでしまい、十分な深さまで埋入することが出来ない上に、撤去することも出来ない場合があります。

また、埋入時にインプラント本体が破損する場合があります。

11.インプラントの初期固定が得られない場合やインプラントを埋めた位置が良く無い場合

インプラントは埋入終了時に骨としっかり固定されて動かない状態が望ましいのですが、骨が極端に柔らかい場合やインプラントメーカー指定のドリル選択を行なった場合でもインプラントが骨にしっかり固定された状態にならない場合があります。

また、開口量が少ない場合や、対合する歯が伸びていている場合、ドリルが理想的な位置を取れず、インプラントを理想的な場所に埋めることができない場合があります。

12.火傷

骨が非常に硬い場合、骨にドリルで穴を開ける時に骨の温度が上がりすぎて火傷が起こることがあります。

火傷を防止する為に十分な注水を行い、骨を冷却しながら骨を削るのですが、インプラントが長い場合は骨の内部まで注水が届かず、骨の温度が上がってしまい、痛みが継続したり、インプラントが骨と結合しない場合があります。 

13.隣在歯の損傷

インプラント埋入に伴い、隣接する歯の根をドリルで損傷することがあります。歯は根が曲がっていたり、斜めに生えていることも珍しくありません。

しかし、歯の治療を受けていて歯の生えている方向が変更されている場合は外観から歯の根が骨の中でどの方向に伸びているのか分かりません。この事故を防ぐ為にはコンビュータサージカルガイドを用いることが有効です。

参考URL:

[※2]http://www.shika-implant.org/publication/dl/2016_guide.pdf P65

インプラント手術時以降、治療中から治療後に起こる問題や合併症の代表例

1.インプラント体、アバットメントの破損

フィクストャーと呼ばれるインプラント本体やインプラントにスクリュー(ネジ)で固定された土台(アバットメント)が破折する場合があります。また、仮歯や最終補綴物が割れたり欠けたりする場合があります。

これらは咬む力が過大な場合や、極端に硬いものを噛んだ場合、夜間の歯ぎしりや食いしばり、補綴設計的にインプラントの数が不十分な場合、インプラントの配置が悪い場合、補綴物の精度が悪い場合、インプラントの骨との結合(オッセオインテグレーション)が失われた場合、補綴物を固定するスクリュー(ネジ)が緩んだり、セメントが溶出した場合などに起こります。

2.スクリュー(ネジ)が緩む、折れる

これらはスクリューの締め付けトルクが不適切な場合や咬む力が過大な場合、夜間の食いしばり、補綴設計的にインプラントの数が不十分の場合、配置が悪い場合、補綴物の精度が悪い場合、インプラントの骨との結合(オッセオインテグレーション)が失われた場合、セメントが溶出した場合などに起こります。

3.器具、補綴物の誤飲、誤嚥

インプラント治療中においては様々な小さい器具を唾液で濡れた狭い空間で扱う必要があります。

唾液に濡れた小さい器具や補綴物は非常に滑りやすく、しっかり固定しながら扱うことが困難です。また、人は口腔内に落ちた物を反射的に飲み込む動作をしますので、常に誤飲、誤嚥のリスクがあります。

4.仮歯や補綴物の破損

仮歯自体は最終的な補綴物に比べ強度が弱いだけでなく、セメントも外しやすい材料を使用しているので、脱離や破損をすることが多いので注意して使用する必要があります。

最終補綴物は打撲などの事故や硬いものを咬んだりした場合、夜間の歯ぎしりや食いしばりなど持続的に大きな力がかかる場合にセラミックの歯が割れたり、インプラントを連結するフレームが折れたりすることがあります。

夜間の歯ぎしりや食いしばりに対しては、ナイトガードを夜間装着することによって補綴物の破損を防ぎます。

5.審美障害

歯を失った口腔は歯を支えている歯槽骨をも喪失していますので、歯茎も吸収し以前と同じ状態ではありません。そこで、歯にかぶせる補綴物による外観の回復には限界があります。

また、治療直後は綺麗な状態に見た目が回復されても、インプラント周囲炎の進行やインプラント周囲骨の経時変化によって骨と歯肉の位置が下がり、アバットメントやインプラント表面が口腔内に露出する場合があります。

6.インプラント周囲粘膜炎とインプラント周囲炎

インプラント治療後インプラント周囲組織に炎症がおこる場合があります。炎症の範囲がインプラント周囲粘膜に限局している状態をインプラント周囲粘膜炎と呼び、炎症の範囲がインプラント周囲の骨まで及んでいる状態をインプラント周囲炎と呼びます。

インプラント周囲粘膜炎が進行し、インプラント周囲炎になるとインプラントを支えている骨が吸収し、骨の吸収が進行するとインプラントが脱落します。インプラント周囲粘膜炎の原因としては清掃状態が悪く、インプラント周囲に細菌が貯留している状態が続いた場合におこります。

また、インプラント周囲炎はインプラント周囲粘膜炎と同様に細菌が原因の場合が多いのですが、インプラントに対して過度な荷重がかかった場合にも骨吸収が起こると言われています。

また、最終補綴物をセメントによって接着した場合、半数以上の症例で余剰なセメントが歯肉の中に残存することが分かっています。余剰セメントはインプラント周囲炎を引き起こす原因になる可能性を示唆されていますので、セメントを使用しないスクリュー固定の補綴が望ましいとの考え方があります。

7.対合歯の歯根破折や磨耗、動揺

インプラントと対合する歯に歯根破折や磨耗、動揺がおこる場合があります。

参考URL:[※3]http://www.shika-implant.org/publication/dl/2016_guide.pdf P67

参考文献

自分の歯の状態に近いオールオン4の症例は?