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ステップ3.最終上部構造の製作

オールオン4治療の仕上げの段階である最終上部構造の製作。その製作工程や重要性、チェックしておきたいポイントなどを詳しくまとめています。

  1. インテグレーションの確認
  2. 仮の歯による調整
  3. 型取り・トランスファー
  4. モックアップ
  5. 最終上部構造の製作
  6. 最終上部構造の装着

インテグレーションの確認

手術後3~6ヵ月ほど経過したら、いよいよ最終上部構造の製作段階に入ります。

このとき、まず初めに行うのが「インテグレーション」と呼ばれるインプラントと骨が結合しているかのチェックです。確認を行い、もしインテグレーションしていないインプラントがあれば、再度インプラントを追加するか、それとも残ったインプラントで問題なく成立するのかを判断していきます。

仮の歯による調整

インテグレーションが確認できたら、いよいよ最終上部構造の製作に着手します。しかし、最終上部構造をいきなり作り始めるのではなく、最初に仮歯を用いて、外観や噛み合わせなどをチェックします。

仮歯の調整は「試行錯誤法」と呼ばれ、1回でベストな状態にできることはまずありません。少し調整しては、また日常で使ってもらい、その感想を元にまた歯科医師が調整する。その繰り返しで、より良い形態を模索していきます。ある程度収束してきたら、最終的な材料で、最終上部構造を製作します。オールオン4手術と同時に最終上部構造を装着する医療機関の場合では、手術の前にこれらの調整を仮の義歯などで入念に行ったり、一度装着した最終上部構造を後に調整する場合があります。

噛みやすさ・顎の位置の調整

オールオン4に限らず広範囲の治療を行う場合は、装着する人工物によって噛んだ時に下顎が収束する位置が変わってきます。

上下、左右、前後、どの位置で下顎が安定すると良いのか。患者さんにとってよりリラックスして楽に噛める位置はどこか。仮歯を用いて試行錯誤を行います。

また、かみ合わせの強すぎる方、食いしばり、歯ぎしりのある方は、何度も仮歯を折ってしまう場合があります。食事に不必要な強い力を出してしまったり、不自然な顎の動きで上下の歯を衝突させてしまうなどの悪い癖を「ブラキシズム」と呼んでいます。

ブラキシズムにより上部構造の長期安定が危ぶまれる場合は、上部構造の素材の変更も考慮します。必ずしもセラミックの白い歯がいつでも良い材料というわけではなく、特にブラキシズムには金属材料の使用が有利な場合があります。さらに、場合によっては噛む力に耐えるために、インプラントを追加埋入する場合もあります。

いずれにせよ、歯科医師と患者さんで相談しながら決めていきます。

喋りやすさの調整

オールオン4では舌の当たる内側の形が、昔のご自身の状態と大きく変わるため、発音に影響が出ます。ほとんどの人が、口内がボロボロの環境だったため、発音が術前より明瞭になります。

しかし、元々歯並びが悪かった方や、本来とは違う舌の動きで工夫することに慣れてしまった方、年形態の悪い入れ歯を使っていた方にとって、一見綺麗なオールオン4の内側の形態が「逆に喋りにくい」ということがあります。

一度習得してしまった舌の「悪い癖」は、患者さん自身の意識的なトレーニングで治す必要があります。仮歯の形態を工夫して喋りやすくすることもある程度はできますが、限界があります。それに、歯科医師が患者さんに言われるがままに快適な形態にした結果、結局昔の歯並びの悪い状態を再現してしまっては元も子もありません。

オールオン4に限らず、入れ歯でも舌のリハビリは必要で、発音には慣れも必要です。その期間は3~6カ月程度が一般的ですが、場合によっては1年以上かかることもあります。最終的に多くの方が発音の問題を解決されますので、結果を急がず、気長に取り組みましょう。

美しさの調整

オールオン4は、歯並びにとどまらず、特に顔の下半分の雰囲気や笑顔のデザインを大きく左右します。歯並びでは、並びの形、サイズ、上下前後左右の位置、傾きなどを決めます。人工歯では、形、位置、サイズ、色を決めます。人工歯肉では、色、歯の長さ、歯肉の形、唇周囲のシワやハリをチェックします。

このように多くの項目を考慮した結果、患者さんが患者さんらしい自然なスマイルができるかを評価していきます。さらに、患者さんの希望によりもう一歩踏み込んだ調整も可能です。

通常、歯の色や形は年齢や人種に合わせて決めていきますが、より白い歯を求められる方には、白い歯を製作したりします。逆に、あまりにも綺麗な歯並びだと「逆に偽物っぽい。昔の自分と違いすぎる」と感じられる場合があります。そのような方には、あえてわずかに歯並びをずらし、自然な歯並びの悪さを演出することもあります。

外観については仮歯の材料での調整には限界があり、最終上部構造の製作で詳細を詰める場合もあります。

型取り・トランスファー

最終上部構造の製作は歯科技工士の国家資格を有する専門家によって行われます。歯科医師は、歯科技工士が最終上部構造を自らのラボで製作できるように、患者さんの口の中の環境を、口の外に再現しなければなりません。そのために必要な作業が、型取りであったり、かみ合わせの記録であったりします。

「咬合器」と呼ばれる、顎の運動を再現する模擬的な頭蓋骨に、患者さんの模型を装着し、噛み合わせを再現し、その咬合器上で製作していきます。患者さんのお口の状態を咬合器に再現することを「トランスファー」と呼んだりします。

トランスファーに求められる精度は非常に繊細です。インプラント治療に限らず、歯科医師は日頃より8~12μmの薄い紙をもちいて、かみ合わせのチェックを行っています。つまり、1/100ミリの精度でトンスファーすることが必要となります。1/100ミリの精度を得るために、トランスファーの工程は患者さんに何度も来院していただく必要がある場合があります。

例えば、型取りも3回ほど行われることがあります。「外形印象採得」「精密印象採得」「インデックス・バリフィケーションモデル」などと呼ばれる工程で、徐々に精度を上げる工夫がされています。面倒かもしれませんが、より良い最終上部構造のために大切な工程ですので、決して急がず、しっかりと取り組みましょう。

モックアップ

トランスファーが完了すると、歯科医師と歯科技工士は、患者さんが直接来院されなくても、患者さんの口腔内を再現した咬合器上で、作業を行えるようになります。ここで最終上部構造を作る前に、モックアップ(模型)を作ります。

歯科業界では昔からモックアップをロウソクのロウを用いて作った経緯があり「ろう義歯」と呼ばれています。モックアップができたら、患者さんに来院してもらい、一度お口の中にいれて、確認をしてもらいます。舌の当たる感覚、かみ合わせの感覚、笑顔や外観の美しさを確かめ、もし不満な点があれば、必ず歯科医師に申告してください。

モックアップが最終チェックの段階となり、これ以降の修正は難しくなります。

最終上部構造の製作

モックアップが完成すると、いよいよ最終上部構造を製作していきます。

医療機関や症例によっても異なりますが、仮の歯と最終上部構造では材料が異なります。仮の歯で用いられた材料は、あくまでも仮の材料ですので、長期の使用を前提としていません。最終上部構造では、チタンやコバルトクロム、ジルコニアなどの硬い材料を用いて骨組みを作るなど、長期の使用に耐えうる工夫をします。

人工歯も、仮の歯で長期観察したかみ合わせの特徴から、プラスチックが良いのか、セラミックが良いのか、金属が良いのか決定します。このように、最終上部構造の製作では、仮の歯やモックアップで煮詰めた外形を真似るように、強度のある美しい材料で作り直します。

最終上部構造の装着

最終上部構造を患者さんの口腔内に装着します。この際に、噛み合わせや美しさなどチェックします。問題がないようであれば、最終上部構造は完成となります。レントゲンや写真の撮影など、一番最初に行った診査と同じような資料採得をします。始めの時と終わりの時を比較して、「主訴」はどれだけ解決できたのか、付随する問題はどれだけ解決したのか、別の課題は残っていないかなどを確認します。

問題がなければ、これで完成となります。お疲れ様でした。

ただし、長期に安定して使用するためにはメンテナンスが不可欠です。必ず次ページのインプラントのメンテナンスも確認してください。

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