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ステップ4.メンテナンス(定期健診)

お口の中に関連するトラブルの原因のほとんどが「バイ菌の感染」か「力によるケガ」で説明できてしまいます。

例えば、歯周病や虫歯は細菌感染症ですし、歯の破折や摩耗は力によるケガです。インプラントに関連するトラブルも、やはりこの2つが原因となります。

オールオン4治療、従来のインプラント治療、入れ歯治療など、すべての歯科治療においても、この2つの原因によりトラブルが生じるため、メンテナンスは非常に大切です。ここでは特にオールオン4などインプラント治療を行った場合のメンテナンスについてお話しします。

  1. お口の問題の原因 1:バイ菌の感染
  2. お口の問題の原因 2:力によるケガ
  3. 経過診のための資料収集
  4. 歯科医療機関は生涯を通じたパートナー

お口の問題の原因 1:バイ菌の感染

インプラント VS 細菌感染

インプラントはチタンとセラミックでできているので、そのものが虫歯になることはありません。なので、インプラントは虫歯フリーと言っても差し支えないでしょう。しかし、歯周病に似た病態は起きます。

そもそも歯周病とは何でしょうか。歯周病とは、歯と歯茎の間の接合部から細菌が侵入し、炎症反応を起こした結果、歯ではなく、周囲の骨が溶けてしまう病気です。

インプラント治療を受けても、インプラントそのものはチタンですが、周囲の骨はご自身の骨のままです。適切なケアを怠ると、歯周病と同じようにインプラントと粘膜の境界から細菌が侵入し、インプラント周囲の骨を溶かしてしまいます。これを「インプラント周囲炎」と呼んでいます。

特に、天然歯とインプラントでは、インプラントの方が周囲の組織が弱く、細菌感染に侵されやすいということが明らかになっています。インプラント治療が必要になったそもそもの原因が歯周病であった方は、インプラントを入れるだけでなく、正しい歯磨き習慣や生活習慣を身につけることが、最も大切な治療となります。

インプラント周囲炎は治せない

インプラント周囲炎は、インプラントに関連するトラブルの中で最も多いトラブルであり、世界的に問題となっています。一度インプラント周囲炎に罹患してしまった場合の根本的な治療法は定まっておらず、世界中で研究が行われている段階です。

残念ながら、インプラント周囲炎の解決を約束できる歯科医師は現代にはおらず、幾つかの治療法は存在するものの、その効果の有無や、効果範囲は限局的であると言われています。したがって、いかにインプラント周囲炎にならないか、もしなっても、いかに進行を食い止めるかが重要となります。

メンテナンスで細菌感染を予防する

メンテナンスを受けている方とそうでない方では、インプラントの生存率に差が出るということは以前より証明されています。さらに、口の中の清掃状態も、メンテナンスを受けている患者さんの方が有意に清潔な状態を保てていることが明らかになっています。

理論的には、上手なケアがご自身一人で永続的にできるのであれば良いのですが、それは机上の空論であり、多くの方はそのような理想的な状態を維持することができません。

メンテナンスは継続が大切

メンテナンスに通い始めると、患者さんの口腔衛生環境は徐々に向上します。そして、ご自身での清掃(セルフケア)が上手になっていきます。

しかし、ここでメンテナンスをやめ、定期検診に来なくなった患者さんは、メンテナンスを行う以前の汚い口腔環境とほぼ同等の状態まで戻ってしまうことが証明されています。

口腔衛生環境の維持は簡単ではありません。ご自身一人の力で立ち向かうことは困難であり、多くの方が挫折しています。メンテナンスを継続し、歯科医師、歯科衛生士と協力して、長く維持していくことが大切です。

一般的に定期検診は少なくとも3~6カ月に1回の頻度で行われます。来院の間隔は、セルフケアの上達具合や、病気のなりやすさなどを加味して、患者さんと歯科衛生士が相談して決定していきます。

メンテナンスでは何をするのか?

定期的に医療機関を受診し、メンテナンスを受ける際に一体何を行うのでしょうか?口内の掃除をしてお終いでしょうか。メンテナンスで一番大切なことは、患者さんが家で行うセルフケア方法を習得することと、実践できているかをチェックすることです。

かつて興味深い実験がありました。何も指導をせずにただ掃除をしただけの患者A群と、逆に一切掃除をせず自宅でのセルフケア方法の教育を徹底した患者B群を比較した場合に、教育を行っただけのB群の方が、結果的に口腔内の清掃状態がよく維持されることがわかりました。

したがって、メンテナンスではまず、正しい歯磨き習慣や食習慣、生活習慣などのセルフケアの習得教育が優先されます。セルフケアの土台ができている上で、それでもご自身の努力では磨けない場所を、歯科衛生士が清掃を行います。

メンテナンスは治療の最初から始まっている

そもそも、正しい歯磨き習慣の獲得は、オールオン4の最終上部構造が装着した後からスタートするものではありません。

医療機関で治療を行うと決めたその時から、メンテナンスは始まっています。口腔衛生状態を良好に保つことは、オールオン4の手術や補綴を成功させる大切なポイントですので、治療が始まった早期の段階から、歯科医師、歯科衛生士と協力して、より良い口腔環境を保つようにしましょう。

お口の問題の原因 2:力によるケガ

意外と知られていない力の問題

そもそも、あなたはなぜオールオン4治療を検討しなければならないほど、お口がボロボロなのでしょうか?ひどい歯周病が原因でしょうか?それともひどい虫歯でしょうか?

歯を失う原因のNo.1は歯周病(42%)、No.2は虫歯(32%)、そしてNo.3は歯の破折(11%)です。感染症である歯周病と虫歯についで多い原因が、歯が外力により割れてしまうことです。

もしあなたが同年齢の人と比べて、自分だけ歯がボロボロなように感じたら、それは歯周病や虫歯だけでなく、歯ぎしりや食いしばりなどの「異常な力によるケガ」が原因なのかもしれません。このような、歯ぎしりや食いしばりといった、異常な噛む力を「ブラキシズム」と呼びます。

ブラキシズム

「ブラキシズム」はとても厄介です。現代において、ブラキシズムに対して長期に耐久できるものは、天然の歯も人工の歯も含めて存在しません。ブラキシズムにさらされると、いかなる治療結果であれ、長期の安定が難しくなります。

「あなたは歯ぎしり・食いしばりをしています」歯科医師からそのように言われて、素直に受け入れられる方はほとんどいません。なぜなら、ブラキシズムの多くは就寝中の無意識の状態で発現することが多いからです。ベッドパートナーより歯ぎしりの音を指摘されたことのある方はご納得いただけるかもしれません。しかし、歯ぎしりの音はブラキシズムのごく一瞬に偶然鳴るものであり、音がならない状態でもブラキシズムは起きている可能性があります。

こんな人はブラキサー

ブラキシズムをしているのかしていないのか。判定は非常に困難です。ブラキシズムの正確な診断方法は確立しておらず、周辺症状からの類推になります。その中でも、年齢と不釣り合いな歯の著しい磨り減り、歯のくさび状欠損(歯が、歯茎のあたりでえぐれている状態)、歯の破折、人工物の破折、顎骨や周囲筋肉の異常な発達などが、類推のポイントとなります。

オールオン4治療行う人で、初めて医療機関を受診した時点で多くの歯を失っている患者さんの場合、手がかりが少ないため治療前にブラキシズムの有無を類推することは困難です。オールオン4治療を行う中で、仮の歯が頻繁に破折する方は、ブラキシズムをする人(ブラキサー)と言えるでしょう。

歯と歯は当たっていないことが普通

日常から上下の歯が接している人も、ブラキサーです。意外に思われるかもしれませんが、人間は何もしていない安静時、上下の歯が2mmほど離れていることが普通で、この隙間を安静空隙(あんせいくうげき)と呼んでいます。安静時に歯が接触している人はブラキサーであり、悪い癖ですので、意識的に改める必要があります。

さらに、人間は食事の時でさえ、ほとんど歯と歯は当たりません。例えば、ボールペンを人差し指と親指で思いっきりつまんでみてください。そして、ボールペンを一気に引き抜いてください。すると、ボールペンを抜かれた人差し指と親指は衝突します。この現象にあなたは違和感を感じないことでしょう。

では次に、そのボールペンを前歯で、ある程度強く噛んでみてください。(歯をおらない程度にしてください)そして、ボールペンを一気に引き抜いてください。すると、上下の歯は衝突せず、ピタッと止まります。

なぜ指と同じように衝突しないのでしょうか?不思議ではありませんか?

実は、人間の顎には、物を思いっきり噛み砕いたとしても、上下の歯がそのままの勢いで衝突して互いを傷つけてしまわないように、急ブレーキがかかる反射反応が備わっているのです。この反射回路は体の中で唯一顎の筋肉にだけ存在する特別なものです。

このように、人間にはそもそも歯と歯を当てないような仕組みが備わっています。もしあなたが、歯と歯をくっつけているようでしたら、それはブラキシズムかもしれません。

ブラキシズムは無くせない

現在、ブラキシズムをなくす治療法は確立していません。かつて、「ブラキシズムは噛み合わせが悪いことが原因で、歯並びを直したり、噛み合わせを調整すると良いのではないか」という説が存在しましたが、現在では否定的な意見も多く聞かれます。

また、近年の研究では「ブラキシズムは日常生活のストレスに対し、就寝時に脳が行なっているストレス発散の運動であり、そもそものストレスを軽減することが良いのではないか。」という意見もあります。

どの患者さんがブラキサーかは正確に断定できませんし、ブラキシズムを治す方法も確立していない現在では、患者さんは「自分もブラキサー、もしくは予備軍」と考えておくことが賢明でしょう。

多くの医療機関では、すべての患者さんをブラキサーまたはその予備軍として警戒しており、特にオールオン4治療が適用となるような広範囲に崩壊の進んでいる患者さんに対しては、後述のスプリントなどを用いることも珍しくありません。

ブラキシズムと上手に付き合う

ブラキシズムへの対策は、日中の起床時と夜間の就寝時で異なる対応を取ることが一般的です。日中は意識があるので、患者さんご自身で意識をしていただいて、食事以外の時間でも上下の歯が不用意に当たっていないか、こまめに意識していただきます。これを「行動変容法」と呼びます。

一方、夜間では意識がありませんので、無意識の間に歯ぎしり・食いしばりをしてしまいます。この場合、「スプリント(バイトプレート・ナイトガード・マウスピースなど様々な呼び方がされます)」を上下の歯の間に介在させて、緩衝材とします。

メンテナンスと力のコントロール

メンテナンスでは、清掃状態だけでなく、噛み合わせが変化していないか、歯や人工歯がすり減っていないかチェックし、ブラキシズムの兆候を見逃さないようにします。

人間は正常な加齢変化の中で、顎骨の形態が変化します。それに従い、当然上下の顎の噛み合わせも変わっていきます。顎の位置が変わっても、噛み合わせに不都合がないように調整する必要があり、メンテナンスでは噛み合わせの変化の状態もチェックします。

また、スプリントを持っている方は、必ずメンテナンスの際に、担当医や担当衛生士にチェックを受けてください。歯がすり減っていない分、スプリントがすり減っているかもしれません。ブラキサーの方にとって、スプリントは消耗品です。症状の程度によって差は大きく、5年経ってもスプリントのすり減らない方もいますし、数週間で穴が開くほどすり減ってしまったり、噛みちぎってしまう方もいます。

スプリントが破損すると、その暴力的な力は歯や人工歯に加わってしまいます。毎回の定期検診で、スプリントのチェックを受け、噛み合わせの調整や、すり減りが著しい場合は、新品への交換などを行うことが大切です。

経過診のための資料収集

一般的に、最低1年に1回は写真やレントゲン撮影など、全体的な診査資料の収集を行います。医療の診査は、とある一瞬のレントゲンなどでわかる診査項目と、経年的に集めた資料からその経過を評価する「経過診」でわかる診査項目があります。

経過診を行うことで、過去から現在までの時間的な評価ができます。例えば、「歯周病の進行速度が著しく早い」「一見深刻そうに見えるが、何年も進行せず安定している」といった評価は、経過診ならではです。

オールオン4治療に限らず、医療機関を転々とされている方やメンテナンスをしっかり受けていない方は、経過診の情報が集積されないので、勿体ない状況といえます。経過診は長くお付き合いをしている医療機関だからこそできます。医療機関を選ぶ際には、生涯を見据えて長く付き合える医療機関を選ぶと良いでしょう。

インプラントの成功判断も経過診

ご自身の受けたインプラント治療が成功しているのかどうかは、当然気になるところだと思います。インプラントの成功の基準はいくつかありますが、その中で経年的な骨吸収を評価する項目があり、これはまさに経過診でしか追うことができません。

顎骨には生理的な吸収現象があり、インプラント周囲の顎骨も、当然経年的に減っていきます。今年埋めたインプラントと、30年前に埋めたインプラントでは、当然周囲の骨吸収の状態は違います。

ご自身のインプラントが成功していたのかどうか、本当にフェアな判断を受けられる方は、メンテナンスをちゃんと受け、経過診のための資料収集を受けた患者さんのみです。オールオン4治療やインプラント治療は良い治療です。ぜひメンテナンスにも積極的に参加し、長期の安定を成功させましょう。

歯科医療機関は生涯を通じたパートナー

前述の通り、オールオン4治療に限らず、治療を受けた歯科医院は今後生涯を通じてお付き合いをしていく大切なパートナーとなります。あなたが50歳なら、あと30年はその医療機関に存続してもらわないといけません。しかし、現実的に30年先まで存続を確信できる医療機関の見極めは容易ではありません。

特に、歯科医療機関のほとんどが個人の診療所であり、医科の病院とは経営体力は比較にもなりません。現在日本では、1日に数件の歯科医院が廃業していると言われています。通院の便や、先生の経験値、性格の相性も大切ですが、30年先のことを考えると、他にも考慮すべきことがあります。あなたの担当医があなたよりも年上であれば、おそらくあなたよりもその先生は先に引退するでしょう。

ベテランの院長先生を求めれば、自ずと60代周辺の先生の医院を訪れることになります。そのような医療機関を受診する際には、院長先生との相性だけでなく、ほかの歯科医師の様子を確認すると良いかもしれません。

若手の教育や世代交代など、医院継承を計画的に行なっている医療機関であれば、院長先生が引退された際でも、医療サービスの品質がガラッと変わってしまったり、途切れてしまうといった心配がより少ないのではないでしょうか?

メンテナンスは続き、患者さんの人生の習慣として溶け込みます。オールオン4治療を検討する際には、「この歯科医療機関はちゃんとしたメンテナンスをしてくれるのか」「自分自身はちゃんとメンテナンスを受ける気があるのか」よく検討することが大切です。

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