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ステップ2.インプラント埋入と仮歯装着

診査診断・説明と同意・手術計画を経て、いよいよ手術当日を迎えます。患者さんはこの日が一番の緊張状態にあると思います。順を追って、治療内容を確認していきましょう。

  1. 手術前日
  2. 手術当日
  3. 安静期間(術後3〜6カ月)に行うこと

手術前日

体調を整える

手術前日は、早めの就寝を心がけましょう。深酒や暴飲暴食は絶対に避けてください。麻酔手技や手術手技にもよりますが、一般的に、手術前は胃の中が空っぽであることが望ましいとされています。

手術の開始時間によっては、絶食の指示がある医療機関もありますので、担当医とよく相談しましょう。

人工物・アクセサリーは外しておく

また、手術の際には、指の爪に血中の酸素濃度を測る機械を取り付けることが一般的です。マニキュアやネイルアートをしている方は、前日に両手両足すべて落としておきましょう。

他にも、付けっ放しになっているピアスや指輪などのアクセサリーも事前に外しておいてください。手術当日は麻酔の影響で記憶があやふやな場合があり、当日外したアクセサリーがどこに行ったか分からなくなってしまうかもしれませんので、極力不要なものは医療機関に持ち込まないようにしましょう。

持病の薬の内服指示を確認する

持病をお持ちで、歯科医師から処方薬がある場合、オールオン4手術の前に薬を通常量飲むべきか、または追加して飲むべき薬があるか、事前に指示があると思います。改めて確認し、指示に従いましょう。

手術当日

多くの医療機関で、オールオン4手術は朝から行われます。朝は絶食指示が無い場合でも、なるべく軽めの食事を心がけましょう。また、高血圧の患者さんは、朝に薬を飲む場合が多いです。薬の服用は歯科医師の指示を改めて確認し、必要に応じて飲むようにしましょう。

手術の際は、口の周りも消毒液を塗ります。メイクはせず、化粧水と乳液程度にしましょう。また、コンタクトレンズもつけないようにしましょう。手術中は乾燥しますし、万が一コンタクトレンズが落ちても、手術は中止できません。

約束の時間に遅刻しないよう、余裕をもって来院しましょう。当日は退院後も麻酔の影響でふらついたり、疲労していることが考えられます。ご自身での運転はさけ、公共交通機関、タクシー、ご家族の送り迎えを利用するようにしてください。麻酔の効果が切れない内に車を運転して交通事故を起こした場合、自動車保険が適用されない可能性があります。手術当日はハンドルを握らないようにしましょう。

オールオン4の手術当日に行う処置には、主に「外科処置」「補綴処置」の2つの処置があります。では、それぞれの流れを見ていきましょう。

前処置

手術に先立ち行うべき処置を前処置と言います、患者さんや、医療機関によって、内容や順番は異なります。

手術開始前に「前投薬」という薬を使用することがあります。痛み止めや、感染症を防止するための抗菌薬、抗炎症薬、鎮静薬などがあります。

医療機関によっては、衣服が汚れたり、緊急時に対応しやすいように専用の手術着に着替えていただく場合があります。

心電図や血圧計、血中の酸素濃度を測る機械などを装着します。また、点滴を体につなげたりします。点滴は注射ですので、少し痛みがあります。

鎮静法を行う場合は、手術開始前から始めることが一般的です。静脈内鎮静法の場合、先に点滴をつないだところから流し込みます。筋肉注射を用いる場合は、点滴とは別に肩の筋肉に注射することが一般的で、痛みが伴います。

手術の前に、口の中を改めて清掃消毒します。この際、消毒薬が非常にまずい場合があります。

注射による局所麻酔はほぼ全ての医療機関で行われます。注射ですので痛みを伴います。一部の医療機関では全身麻酔により、体の全体の痛覚を麻痺させる場合があります。この場合、局所麻酔を用いなくとも、痛覚の麻痺は可能となります。ただ、局所麻酔に用いる薬品は、局所の止血作用などもあり、痛覚の抑制以外にも用いられる場合があります。

外科処置

いよいよ手術が始まります。手術は文章で書いてしまうと、意外とシンプルかもしれません。実際は個々の患者さんにおいて考慮すべきことが変わってきますが、大きな流れは下記の通りです。

  1. 粘膜の切開剥離を行います。神経や重要な血管など危険な箇所は避けるようにします
  2. 凸凹になった顎の骨を削って、形を整えます
  3. インプラントをあらかじめ決めた位置に埋入します
  4. あらかじめ決めたアバットメントを装着します
  5. 歯肉を縫合します。必要に応じて、歯肉の形も整えます
  6. それぞれのステップで、計画通り進んでいるか、再確認しながら行います。レントゲンを撮影し、骨の内部も異常がないか確認します
  7. 医療機関にもよりますが、歯型を取ります

これらの外科処置(手術)にかかる時間は片あごにつきおよそ40~90分程度です。手術はこれで終了です。患者さんは、次の補綴処置までの間、休憩を取ります。

補綴処置

インプラント埋入手術を終え、次は仮の歯を作る工程です。

オールオン4における仮歯製作の行程には、様々な方法があります。一つの方法が優れているというわけではなく、症例や、手術の結果に応じて、歯科医師の判断で使い分けることになります。

義歯の製作時期

義歯の種類

作業を行う場所

補強の有無

噛む範囲

仮歯の装着の際は、手術開始から数時間経過していますので、局所麻酔の効果が切れてくることがあります。局所麻酔の効果は1~2時間程度で減弱します。痛みを感じた場合は我慢せずに、歯科医師に申告してください。改めて局所麻酔を追加し、痛みを抑制します。

仮歯の装着に必要な時間は、症例や手法により様々です。1時間で終える場合もあれば、3時間かかる場合もあります。医療機関によっては、あえて同日ではなく翌日に装着する場合や、仮歯ではなく最終完成状態として、人工歯を装着する場合もあります。

手術と仮歯の装着を終え、患者さんは内服薬の処方と術後の注意事項の説明を聞きます。出血していないか、血圧や心拍など体の状態が安定しているか、麻酔のせいでフラフラしていないかなどを確認して、退院となります。帰宅時は麻酔の効果が若干残っている場合があります。くれぐれもご自身で車の運転をされないよう、ご注意ください。

安静期間(術後3〜6カ月)に行うこと

出術後、安静期間が置かれます。それぞれの時期により注目する内容が異なります。何度か医療機関で、診察を受けることになりますが、具体的にどのようなことをチェックしているのでしょうか?

手術後~3日ほど

患者さんの無事を確認します。出血の有無や、痛みや腫れの程度、薬の相性などをチェックします。3日ほどで全体的な炎症症状の改善傾向が見られない場合、処方薬が体に合っていないのかもしれません。そのような場合は、歯科医師の判断により、お薬の種類の変更や、追加の処方がある場合があります。

かつて、手術の後に傷口を消毒する時代がありました。最近は、医科歯科問わず、患部の洗浄を行うのみで消毒薬は使われない傾向にあります。消毒薬は言わば「軽い毒」ですので、バイ菌に効くと同時に治りかけの幼弱な人間の細胞にもダメージを与えてしまうことが判っています。

よって、この時期の通院は、患部のチェックのみしかしない場合が多いと思います。「これだけで大丈夫?」と思われるかもしれませんが、この時期はやることが少ないほど経過が順調な証拠です。

この時期に減退しない症状としては「腫れ」「紫斑」です。手術に伴う腫れは一過性のものですが、一度腫れると約3週間ほど続くことが一般的です。また、「紫斑」とは、内出血のことを指します。傷口の中で溜まった血液が、時間とともに変性分解され、周辺の組織に染み込んでいきます。

手術直後はまだ周辺組織に染み込んでいないので確認できませんが、手術後~4日ほどにかけて顔に「青あざ」が徐々に広がっていくことがあります。青あざのできる位置と手術を行った部位は必ずしも一致しません。上顎の手術を行っても、青あざは唇から頬の下あたりや、目の内側、下側あたりに出ることがあります。「紫斑」は初めは赤茶色や紫色ですが、そのうち黄色になり、4週間ほどで消失することが一般的です。

手術後~2週間ほど

手術を行った部位はバイ菌に感染しやすいため、清潔を保つ必要があります。そういった意味で、口腔領域の手術は非常に条件が悪いと言えます。なぜなら、口の中は体のどの部位よりもバイ菌だらけだからです。

手術に関連した患部の細菌感染を、専門用語で「手術部位感染(SSI:Surgical Site Infection)」と呼びます。手術部位感染は手術後約2週間以内に発生することが多く、最も注意が必要です。2週間を過ぎ、患部の治りが順調であれば、ひとつ山を超えたことになります。

また、この時期周辺で縫った糸を除去することがあります。オールオン4では、傷口の上に仮の歯が装着されていますので、この時点で縫った糸が取れない場合がありますが、それらは後の工程で除去しますので大丈夫です。

3~5週間ほど

この頃に自発痛が残っていることは一般的にはありません。もしあれば、歯科医師に必ず申告してください。3~5週間ほどになると、前述の通り、「腫れ」「紫斑」もかなり治まってきます。この時点でこれらの症状の減退が見られない場合、歯科医師に必ず申告してください。

この頃、患者さんは炎症症状がほとんどなくなりますので、ついつい「治った」と思い、食事への配慮が薄れがちです。インプラントが骨と結合するまでに最低3~4カ月を要する事実は変わりません。症状が治まっても、むやみに硬いものを噛んだりしないよう、気をつけましょう。

1~3~6カ月ほど

術後は1~3カ月毎に、歯磨きの状況や仮歯、傷跡に異常がないかをチェックします。腫れが減退すると、仮の歯と歯肉の間に隙間ができて、「息漏れ」により喋りにくくなることがあります。傷の治癒過程における正常な反応ですので、歯科医師に報告してください。義歯の調整を行い対応します。

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